
- SBIRとは何か 制度の仕組みと目的
- 制度の種類と公募の段階 フェーズ比較
- 採択企業が成果を出す営業・マーケティングの考え方
SBIR制度とは、研究開発型企業の技術シーズを事業化まで一気通貫で支援する国の制度です。日本版の同制度(中小企業技術革新制度)は、各省庁が研究開発補助から事業化支援までを段階的に提供する枠組みとして運用されています。本記事では、制度の仕組みに加えて、採択後に最初の導入先が決まらないという課題への対処法を解説します。
1. SBIRとは何か 制度の仕組みと目的

SBIRとは、Small Business Innovation Researchの略称で、研究開発型企業の技術を事業化につなげるための公的支援制度です。日本版は中小企業技術革新制度として法律に位置づけられ、各省庁の補助金・委託費を通じて研究開発から事業化までを連続的に支援します。
1-1. 日本版とアメリカ版の違い

日本版とアメリカ版の違いは、支援の対象と運用の仕組みにあります。内閣府が2023年3月に公表した資料によれば、米国の制度は1982年に始まり、各省庁の研究開発予算の一定割合をスタートアップ支援に充当する仕組みです。同資料では、1999年に始まった従来の日本版は中小企業支援に偏り、スタートアップ支援になっていなかったと整理されています。
出典: 新制度について - 内閣府
前述の内閣府の2023年3月時点の資料によれば、この課題を是正するため、2021年4月に根拠規定を科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律へ移管し、内閣府が司令塔となる新制度へ移行しました。同資料では、新制度に省庁横断の運用と段階ごとに選抜する仕組みが取り入れられたと整理されています。最新の運用は内閣府・各省の公募要領でご確認ください。
- 米国:各省庁の研究開発予算の一定割合をスタートアップ支援に充当
- 日本:内閣府の2023年3月時点の資料によれば、2021年4月に省庁横断・多段階選抜の新制度へ移行
1-2. 中小企業技術革新制度としての位置づけ(中小企業庁・内閣府)
本制度は、内閣府が全体方針を示し、中小企業庁・各省庁が公募・採択を実施する体制です。中小企業技術革新制度という法令上の名称のもと、経済産業省・NEDO・国土交通省・JSTなど複数の機関が公募を行っています。研究開発補助の採択企業は、制度の全体像を理解したうえで自社に合う公募を選ぶことが重要です。研究開発補助の採択後に事業化を進める企業の方は、研究開発補助の採択企業の方へのページも参考になります。
2. 制度の種類と公募の段階 フェーズ比較

本制度の公募は、フェーズ1(事業化可能性検証)、フェーズ2(研究開発)、一気通貫型、連結型という段階・形式に分かれます。応募前にどの段階・形式が自社の開発状況に合うかを見極める必要があります。
2-1. 各省庁(NEDO・内閣府・国交省等)の公募の違い
各省庁の公募は、対象技術領域・審査プロセスがそれぞれ異なります。省庁や機関によって対象領域や支援内容が異なります。下表は公募形式ごとの特徴を整理したものです。
| 公募形式 | 特徴 | 主な対象 |
|---|---|---|
| フェーズ1 | 事業化可能性の検証段階 | 研究開発初期の企業 |
| フェーズ2 | 本格的な研究開発段階 | フェーズ1完了企業 |
| 一気通貫型 | フェーズ1〜2を連続公募 | 開発計画が明確な企業 |
| 連結型 | 複数省庁の事業を連結 | 事業化まで見据えた企業 |
2-2. 採択後のステージゲート審査
採択後は、ステージゲート審査と呼ばれる段階評価を通過しなければ次の支援段階に進めません。ステージゲート審査とは、研究開発の進捗・事業化見込みを一定期間ごとに評価し、継続可否を判断する仕組みです。NEDOの推進プログラムでは、このステージゲート審査の結果によって、フェーズ2への移行や補助金の継続支給が決まります。
- 審査では技術進捗に加えて事業化の具体性も評価される
- フェーズ間の移行は自動ではなく、都度の審査通過が条件
補助対象となる金額や要件は公募要領ごとに異なるため、応募前に必ず最新の公募要領を確認してください。
3. 実証後に導入先が決まらない理由と事業化の進め方

実証後に導入先が決まらない主な理由は、技術検証と営業活動を分けて考えてしまうことにあります。事業化のステップは、採択・研究開発・実証だけでは完結しません。実証の先にある最初の導入先の開拓までを見据えて動く必要があります。
3-1. 研究開発型スタートアップ・大学発ベンチャーが陥りやすい失敗
研究開発型スタートアップや大学発ベンチャーが陥りやすい失敗は、技術の優位性を伝えれば顧客は決まるという思い込みです。実証の結果だけを示しても、導入側の予算化や社内承認の手順は進みません。
市場の動向として、大学発ベンチャーそのものは増えています。経済産業省の2022年度の大学発ベンチャー実態調査によれば、大学発ベンチャー数は前年度調査から477社増加し3,782社となり、2014年度以降で企業数・増加数ともに過去最多を記録しました(2022年度調査時点)。
出典: 令和4年度産業技術調査事業 大学発ベンチャーの実態等に関する調査
大学発ベンチャーとして研究室発の技術を事業化する場合、共同研究先との関係を営業活動の起点として整理しておくと、導入候補を絞りやすくなります。大学発ベンチャーの営業体制構築に課題を感じている方は、大学発ベンチャーの方へのページで詳しい内容を確認できます。
3-2. 採択・補助金獲得から初号機販売・最初の顧客までのステップ
採択から最初の顧客獲得までは、逆算した設計が必要です。実証が終わった段階から最初の導入先を決め、そこから半年程度の計画を立てて動く進め方が有効です。
- 採択・研究開発:技術の完成度を高める段階
- 実証(PoC):顧客の現場で効果を検証する段階
- 初期設計:導入先の条件・順序・数値目標を決める段階
- 営業実行:電話・メール・ウェビナー・プレスを動かす段階
実証の成功から販売開始までの段取りは、実証中から計画に組み込んでおくことが大切です。実証後の導入先開拓を体系的に進めたい方は、実証後の導入先開拓のページが参考になります。
4. 採択企業が成果を出す営業・マーケティングの考え方

採択企業が事業化で成果を出すには、技術説明資料を顧客の業務課題から書き直す工程が欠かせません。技術の性能を説明するだけでは、導入の意思決定者には届きません。
4-1. 技術説明資料を顧客の業務課題で書き直す手順
書き直しの起点は、実証先の担当者が実際に口にした困りごとです。技術説明資料をそのまま営業資料に転用すると、導入側の判断材料が不足します。次の順で資料を組み替えると、導入側が社内で説明しやすくなります。
- 実証先の議事録から、担当者が述べた業務上の困りごとを書き出す
- 困りごとごとに、現在の手間・時間・判断の遅れを言葉で整理する
- 技術の特長を、その困りごとが減る理由として1文で書き直す
- 資料の冒頭を性能表ではなく、困りごとと解決後の業務の姿に置き換える
問い合わせは来ているのに商談に進まない企業では、この書き直しが不足している場合があります。問い合わせの段階で顧客の課題を聞き取り、次の打ち合わせの議題を決めてから面談に臨むと、商談への移行が進めやすくなります。
4-2. VC・国の支援策と並走させる販路開拓の動かし方
VCの投資先企業は、資金調達後の売上づくりを国の支援策と並走させることで効率的に進められます。補助事業の採択と並行して、電話・メール・ウェビナー・プレスリリース・サイト運用を一体で動かす体制が求められます。
- VCからの資金調達後は、営業体制の構築が遅れがちになりやすい
- 代表者が営業を兼任する体制では、販路開拓の手数が不足しやすい
マーケティング・営業責任者の採用が進まず、代表が営業を兼ねている場合は、販路開拓の役割を社内外のどこが担うかを先に決めておくことが大切です。
よくある質問
SBIRとは何ですか? 研究開発型企業の技術を事業化まで支援する公的制度の名称です。日本では中小企業技術革新制度として各省庁が公募・採択を実施しています。
日本版の制度とは? 内閣府が方針を示し、経産省・NEDO・国交省・JSTなどが公募を行う事業化支援の枠組みです。米国の制度をモデルに制度設計がなされています。
アメリカと日本の制度の違いは何ですか? 違いの一つは支援の対象と運用の仕組みです。米国は各省庁の研究開発予算の一定割合をスタートアップ支援に充てる仕組みです。内閣府の2023年3月時点の資料によれば、日本は従来の中小企業偏重を見直し、2021年4月に省庁横断の新制度へ移行しました。
フェーズ1が終われば自動的にフェーズ2へ進めますか? 自動的には進めず、ステージゲート審査の通過が条件です。審査では技術の進捗に加えて事業化の具体性も評価の対象です。実証段階から導入候補先との対話記録を残しておくと説明材料になります。
採択後、最初の導入先はどう決めればよいですか? 実証が終わった段階から逆算し、条件・順序・数値目標を初期設計で定めます。その後、電話・メール・ウェビナーなどの営業施策を段階的に実行する進め方が有効です。
まとめ
本記事の要点は次の3点です。
- SBIR制度の公募形式は4つあるため、今週中に自社の開発段階に合う公募要領を2〜3本取り寄せ、要件を一覧にしてください
- 実証先の議事録から困りごとを書き出し、最初の導入先の条件と打診する順序を1枚にまとめておきましょう
- 営業資料の冒頭を性能表から顧客の業務課題に差し替え、次の面談で反応を確かめてください
マーケティング+は、専任のチームが社外の営業・マーケティング部門として入り、最初の導入先から逆算して6か月の計画を設計します。初期設計で販売先の条件・順序・数値目標を定めたうえで、電話・メール・ウェビナー・プレス・サイトを一体で動かします。6か月の進め方の詳細は、サービスについてのページでご確認いただけます。
実証の先にある最初の導入先と、その後の売上づくりの計画は決まっていますか?






