
- プレスリリースの書き方の基本と構成要素
- プレスリリースのタイトルとリード文の書き方
- プレスリリース後に導入先の商談へつなげる方法
プレスリリースの書き方の答えは、「誰にとって何が新しいか」を最初の3行で言い切り、技術の説明は後ろに回すことです。研究開発型の会社は、技術の正確さよりも導入する側の利点を先に書くことで、記者と見込み顧客の両方に読まれる文書になります。
本記事では、タイトル・リード文・本文・会社概要の作り方を順に説明します。あわせて、配信前の確認項目と発表後に導入先の商談へつなげる方法も整理します。
1. プレスリリースの書き方の基本と構成要素

プレスリリースは「タイトル・リード文・本文・会社概要・問い合わせ先」の5つで構成します。 この順番は記者が読む順番でもあり、上から重要度の高い情報を置くのが基本です。
1-1. プレスリリースとは何か
プレスリリースとは、企業や団体が報道機関に向けて新しい事実を公式に知らせる文書です。広告と異なり、掲載するかどうかは記者や編集者が判断します。
そのため、書き手の伝えたいことより、読者にとっての新しさが問われます。研究開発型の会社では、論文や技術資料と同じ感覚で書くと読まれにくくなります。
1-2. 5つの構成要素と役割
各要素の役割は次のとおりです。
- タイトル:何が起きたかを1行で伝える部分
- リード文:誰が・いつ・何を・なぜを3〜4文でまとめる部分
- 本文:背景・内容・今後の予定を順に説明する部分
- 会社概要:所在地・代表者・事業内容をまとめる部分
- 問い合わせ先:報道関係者が連絡できる担当者の情報
記者はタイトルとリード文で読み進めるかを決めます。本文に良い情報があっても、冒頭で伝わらなければ読まれません。
1-3. 研究開発型企業がプレスリリースを書く目的
研究開発型の会社にとって、プレスリリースの目的は報道掲載だけではありません。発表文は、営業先に渡せる公式な説明資料としても使えます。
- 報道機関に新しい事実を知らせる
- 導入を検討する会社に信頼の根拠を示す
- 採用や資金調達の場で事業の進み具合を伝える
明日できる行動として、自社の発表で一番届けたい相手を1つに決めてください。 相手が決まると、タイトルと本文の書き方が定まります。
2. 研究開発型企業のプレスリリースが読まれない理由

読まれない原因の多くは、技術の説明から書き始めて、導入側の利点が後ろに埋もれることです。 内容の良し悪しより、情報の並べ方で損をしている場合があります。
2-1. 技術の説明から書き始めてしまう
研究者は、原理や手法を正確に説明する習慣があります。プレスリリースでは、この習慣が冒頭を長く難しくします。
- 冒頭に専門用語が続き、記者が要点をつかめない
- 性能の説明が中心で、誰の何が変わるかが見えない
- 正確さを優先して、主語と結論が文末に回る
技術の説明は本文の中盤で十分です。冒頭では、その技術で現場の何が変わるかを書きます。
2-2. 記者と導入先で読み方が異なる
記者は「社会にとって何が新しいか」を探して読みます。一方で、導入を検討する会社は「自社の課題が解決するか」を探して読みます。
両者の関心は重なる部分もありますが、同じではありません。プレスリリースは記者向けに書き、導入先向けの詳しい情報は営業資料や自社サイトに回すと整理しやすくなります。
2-3. 発表後の受け皿が決まっていない
発表で関心を持った会社がいても、次に何をすればよいかが書かれていないと連絡は来ません。実証を終えた段階では、最初の導入先をどう決めるかが固まっていないことも多くあります。
- 問い合わせ窓口が代表者のメールだけになっている
- 資料請求や面談の申込先が書かれていない
- 誰が対応するかが社内で決まっていない
実証の後に販売先をどう絞るかは、実証後の導入先開拓でも整理しています。発表文を書く前に、反応した相手を誰が受け止めるかを決めておきます。
3. プレスリリースの発表ネタと配信タイミング

発表すべきなのは「外部の人が初めて知る事実」であり、社内の進み具合の報告ではありません。 ネタの選び方と出す時期で、読まれ方は変わります。
3-1. ニュースになる材料の選び方
研究開発型の会社で発表の材料になりやすいものは次のとおりです。
- 新製品・新サービスの提供開始
- 実証の完了と、その結果の公表
- 事業会社や自治体との共同研究・業務提携
- 資金調達の完了
- 国の研究開発補助への採択
このうち、導入先の獲得につながりやすいのは提供開始と実証結果の公表です。読み手が「自社でも使えるか」を考える材料になるためです。
3-2. 研究開発補助の採択・終了時の注意
SBIRやNEDO、JSTなどの研究開発補助に採択された場合も、発表の材料になります。
ただし、採択の公表方法や謝辞の書き方には、制度ごとの決まりがある場合があります。発表前に公募要領や交付規程で、表記の要件を必ず確認してください。 補助事業の終了後の売上づくりについては、研究開発補助の採択企業の方へでも考え方をまとめています。
3-3. 配信タイミングの判断基準
配信の時期は、発表内容と相手の都合で決めます。判断の目安は次のとおりです。
- 共同発表の場合は、相手先の承認日から逆算する
- 展示会や学会の発表日に合わせる場合は、数日前に出す
- 大きなニュースと重なる時期を避ける
明日できる行動として、今後半年で発表できそうな材料を一覧にしてください。並べてみると、出す順番が決めやすくなります。
4. プレスリリースのタイトルとリード文の書き方

タイトルは「誰が・何を・どうした」を1行で示し、リード文で理由と時期を補います。 記者はこの2か所で読み進めるかを判断します。
4-1. タイトルの書き方
タイトルには、発表の主語と新しい事実を入れます。抽象的な表現より、具体的な動作を示す言葉が伝わります。
- 主語となる会社名を入れる
- 「提供開始」「締結」「完了」など動作を明確にする
- 対象となる業界や利用者を入れる
- 長くなる場合は副題に分ける
「次世代の革新技術」のような形容は、記者にとって判断材料になりません。何がどう変わったかを書きます。
4-2. リード文の書き方
リード文では、5W1Hのうち「いつ・誰が・何を・なぜ」を優先して書きます。3〜4文で、本文を読まなくても要点が分かる形にします。
1文目で発表の事実を述べます。2文目でその背景や理由を書きます。3文目で今後の予定や提供方法を示します。
4-3. よくある書き方と書き換えの例
研究開発型の会社でよく見られる書き方と、その書き換えの方向は次のとおりです。
- 原理の説明から始める書き方は、利用者の変化から始める
- 性能の数値を並べる書き方は、比較の基準を添える
- 「〜を目指す」で終わる書き方は、次の具体的な予定を書く
明日できる行動として、自社の発表タイトルを専門外の家族や知人に読んでもらってください。 一読で意味が通じるかが目安になります。
5. プレスリリース本文と会社概要の書き方

本文は「背景・内容・特長・今後の予定」の順に書き、技術の詳細は特長の中で必要な分だけ説明します。 会社概要と問い合わせ先は、記者がすぐ連絡できる形で添えます。
5-1. 本文の段落の順番
本文は次の順番で組み立てると読みやすくなります。
- 背景:利用者や業界が抱える課題
- 内容:今回発表する製品・提携・実証の概要
- 特長:従来の方法と比べて何が違うか
- 今後の予定:提供開始時期や次の展開
- 関係者のコメント:代表者や共同研究先の言葉
段落ごとに小見出しを付けると、記者が必要な情報を探しやすくなります。
5-2. 技術資料とプレスリリースの違い
技術資料とプレスリリースは、読み手と目的が異なるため書き方も変わります。両者の違いを次の表に整理します。
| 項目 | 技術資料・論文 | プレスリリース |
|---|---|---|
| 主な読み手 | 専門家・研究者 | 記者・導入検討者 |
| 冒頭の内容 | 研究の背景と目的 | 発表の事実と利点 |
| 技術の説明 | 原理まで詳しく | 必要な分だけ |
| 専門用語 | そのまま使う | 言い換えて使う |
| 結びの内容 | 考察と課題 | 今後の予定と連絡先 |
この表のとおり、プレスリリースでは結論と利点を先に置きます。専門用語は、初めて出る箇所で一般の言葉に言い換えます。
5-3. 会社概要と問い合わせ先の書き方
会社概要は、記者が記事の中で会社を紹介するときに使います。正確で簡潔な情報を載せます。
- 会社名・所在地・代表者名・設立年
- 事業内容を1〜2文で
- 自社サイトのURL
- 報道関係者向けの担当者名・電話・メール
問い合わせ先は報道向けと導入検討者向けを分けて書くと、反応を受け止めやすくなります。 明日できる行動として、自社の会社概要を発表用の定型文として1つ用意してください。
6. 配信前のチェックリストと配信方法

配信前には事実関係・表記・関係者の承認の3点を確認し、配信先は届けたい読み手から逆算して選びます。 公開した文書は取り消しにくいため、確認の手順を決めておきます。
6-1. 配信前のチェックリスト
配信前に確認する項目は次のとおりです。
- 社名・製品名・人名の表記に誤りがないか
- 日付・曜日が一致しているか
- 共同研究先や提携先の承認を得ているか
- 補助事業の表記要件を満たしているか
- 未公開の技術情報や特許出願前の内容が含まれていないか
- 問い合わせ先が実際に対応できる状態か
特許出願前の内容は、公開すると権利化に影響する場合があります。知的財産の担当者や弁理士に事前に確認します。
6-2. 配信先の選び方
配信先は、届けたい読み手が普段読んでいる媒体から選びます。研究開発型の会社では、一般紙より業界専門紙が導入先に届く場合があります。
- 導入先の業界で読まれている専門紙・業界誌
- 技術系のニュースサイト
- 地域の経済紙や地元の報道機関
- 自社サイトのお知らせ欄
配信サービスを使う方法もありますが、業界紙の記者に直接届ける方法も有効です。明日できる行動として、導入先の担当者が読んでいる媒体を3つ調べてください。
6-3. 共同発表の調整方法
大学や事業会社と共同で発表する場合は、相手先の広報部門との調整が必要です。調整には時間がかかるため、早めに着手します。
共同発表では、文面・配信日時・問い合わせ窓口の3点を事前に文書で合意しておきます。 大学発ベンチャーの場合は、大学の広報の手順に合わせると進めやすくなります。
7. プレスリリース後に導入先の商談へつなげる方法

発表の価値は掲載された数ではなく、その後に何件の打ち合わせが生まれたかで判断します。 そのためには、発表と営業の動きを一続きで設計します。
7-1. 問い合わせの受け皿を用意する
発表で関心を持った会社が連絡しやすい導線を用意します。連絡先がメールだけだと、比較検討の段階の会社は動きにくくなります。
- 導入検討者向けの説明ページを用意する
- 資料請求と面談申込の窓口を分ける
- 問い合わせから返信までの担当と期限を決める
関心はあるのに次の打ち合わせに進まない場合は、問い合わせの商談化で原因と対処を整理しています。
7-2. 営業資料との接続
プレスリリースは、営業の場で配る資料としても使えます。発表文を営業資料と組み合わせると、導入先への説明に一貫性が生まれます。
- 発表文の要点を営業資料の1枚目に入れる
- 掲載された記事を信頼の根拠として添える
- 実証結果を導入後の効果の説明に使う
代表者が営業を兼ねている会社では、発表後の対応が後回しになりがちです。対応の担当を事前に決めておきます。
7-3. 次の発表計画を立てる
1回の発表で導入先が決まることは多くありません。発表を継続し、関心を持った会社との接点を重ねることが大切です。
次の発表は、最初の導入先を決める時期から逆算して計画します。 明日できる行動として、今後半年の発表予定と営業の予定を1枚の表に並べてください。
よくある質問
プレスリリースは何文字くらいで書けばよいですか?
A4用紙1〜2枚に収まる分量が目安です。タイトルとリード文で要点が伝わることを優先し、詳しい技術情報は別の資料に回します。長さより、冒頭の分かりやすさで判断します。
研究開発型の会社が最初に発表すべき内容は何ですか?
導入先が判断材料にできる「提供開始」か「実証結果」がおすすめです。資金調達や採択の発表も信頼の根拠になります。ただし、読み手が自社で使えるかを考えられる材料のほうが商談につながります。
専門用語はどこまで使ってよいですか?
初めて出る箇所で一般の言葉に言い換えれば使って構いません。記者は専門外の読者に向けて記事を書くため、言い換えがあると引用しやすくなります。略語は正式名称を併記します。
補助事業に採択されたことは発表してよいですか?
発表できる場合が多いものの、表記や時期の決まりは制度ごとに確認が必要です。公募要領や交付規程で、公表の方法と謝辞の書き方を確かめてから配信してください。
プレスリリースを出しても掲載されない場合はどうすればよいですか?
新しさの伝え方と配信先の選び方を見直します。タイトルで何が変わるかが伝わっているかを確認し、導入先の業界の専門紙に届けます。自社サイトに掲載すれば、営業資料としても活用できます。
まとめ
- プレスリリースの書き方の基本は、タイトルとリード文で「誰にとって何が新しいか」を言い切り、技術の説明は本文に回すことです。
- 研究開発型の会社は、記者向けの発表文と導入先向けの資料を分けると、両方の読み手に伝わりやすくなります。
- 配信前には事実関係・関係者の承認・補助事業の表記要件を確認し、公開後の取り消しを防ぎます。
- 発表の価値は掲載数ではなく、その後に生まれた打ち合わせで判断し、営業の計画と一続きで設計します。
マーケティング+は、専任のチームが社外の営業・マーケティング部門として入り、最初の導入先から逆算して6か月を設計します。発表の計画と商談づくりを同じ流れで進められます。
次の発表で、最初の導入先につなげる道筋は決まっていますか?






